分子式を見ただけで、分子の形を予測することはできるだろうか。
水などの簡単な分子に関しては、折れ線型と覚えている人も多いだろう。
しかし、多くの分子は分子式を見ただけでは、形を推測することはできない。
分子の形を決める要因となるのは最外殻の電子(つまり価電子)である。
この価電子から、分子の構造を簡単に推定することのできるモデルがVSEPRモデルである。
今回はこのモデルについて紹介する。
VSEPR:Valence-shell Electron Pair Repulsion = 原子価殻電子対反発
考え方
- 「結合電子対+孤立電子対」が最も遠ざかるような形になる
- 分子の形は結合電子対の位置のみで決まる=孤立電子対は分子の形には含めない
Ex.) メタンCH4 結合電子対 4対→四面体形(109°)
※孤立電子対がある場合、その数だけ結合角は小さくなる
Ex.) アンモニアNH3 結合電子対 3対+孤立電子対 1対→三方錐形 107°
Ex.) 水H2O 結合電子対 2対+孤立電子対 2対→折れ線形 104.5°
多原子分子の形を予測:VSEPRモデル
多原子分子の形を予測するのに使われる理論である。
VSEPR:Valence-shell Electron Pair Repulsionで、日本語では「原子価殻電子対反発」とよぶ。
VSEPRモデルの考え方
原子の数と電子対の数を数える。
そして、孤立電子対があれば、その数も数える。
VSEPRモデルでは、これらの電子対が最も遠くなるように配置された形と考える。
これだけだと分かりづらいので、図を見ながら考えてみる。
単純な分子でメタンを例にあげる。
メタンは中心の炭素原子に対して、4つの水素原子が結合している。
つまり、4つの電子対が結合に関与している。
この4つの電子対が反発を最小にするように離れて分布する。
ではどうなるかというと、最小になる形は四面体形が最も合致する。
孤立電子対の影響
メタンではすべての電子対が結合に関与していた。
実際にはこれに加えて孤立電子対の数も考慮する必要がある。
これはアンモニアNH3を見ればわかりやすいだろう。
アンモニアは窒素に3個の水素原子が結合している。
これに加えて窒素には1組の孤立電子対がある。
これはどうなるかというと、三方錐形になる。
注意として形を決めるのは原子のみで、孤立電子対は含まれないことである。
結合角と孤立電子対
ここまで、電子対の数で分子の形を予測できることを紹介した。
これらは同じ単結合なので、同じ結合角を持つはずと考えるかもしれない。
しかし、2対の結合電子対が隣接し、かつ孤立電子対が1対以上ある分子については異なってくる。
アンモニアNH3
中心電子N、Hが3個と孤立電子対が1対あるため、正四面体構造(結合角109.5°くらい)を取るはずである。
しかし、実際には107°と想定される角度よりも少し小さくなる。
水H2O
同様のことは水H2Oでも言うことができる。
水は中心電子対O、Hが2個に加えて孤立電子対が2対ある。
これも合計4対なので、正四面体と同様(分子の形としては折れ線形)の構造を取るはずである。
しかし、実際の結合角は104.5°である。
孤立電子対が2対になることで、NH3のときより影響が大きくなる。
このように孤立電子対の数だけ、すべてが結合電子対のときに比べて結合角が小さくなる傾向があるといえる。
最後に:結合電子対の数によって分子は様々な形を取る
他にもいくつか取りうる形はある。そのうちの一部を下に示す。
いずれの場合も、中心原子の持つ電子対に対し、どれに原子が結合しているかに注目する。
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