タンパク質を宿主から安定的に取り出すために

protein-extraction-condition-eyecatch 生化学ノート
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分子クローニングや遺伝子工学が発展し、研究者はほしいタンパク質を微生物に大量に作らせることができるようになった。さて、微生物内にあるタンパク質を取り出したいと考えたとする。もちろん微生物内には生きるために、タンパク質を大量に発現させている。その中から、自分のほしいタンパク質のみを取り出さなければならない。そのためのステップが「精製」である。

精製の第一歩は、培養した微生物を破砕し、タンパク質を溶液として細胞外に取り出すことである。タンパク質は非常に微妙なバランスで構造を保っているため、様々な理由でその構造が壊れてしまう。そうならないために注意すべき事項として5点挙げる。

  1. pH
  2. 温度
  3. 分解酵素
  4. 表面変性
  5. 長期保存
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タンパク質を安定に保つために

前提として、微生物内の環境と精製タンパク質の環境は異なる。そのため、なるべく微生物内の環境に近くなるよう配慮する必要がある。条件はタンパク質による部分があるのが正直なところだが、以下の5点は注意が必要となる。

1. pH

pHが変わると表面の電荷が変わって、タンパク質内や溶媒との相互作用が変わってしまう恐れがある。それを防ぐために、pHが一定となるような緩衝液(バッファー)に溶かす。バッファーは種類によって得意とするpH領域があるので、目的のpHに合ったバッファーを使うのが重要となる。

参考URL: バッファーの種類が表としてまとめられている。

生化学用緩衝液 | 東京化成工業株式会社
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2. 温度

タンパク質は温度が高くなると、変性する可能性が高くなる。よほど頑丈なものでない限り、細胞破砕後は常に氷上に置くのが無難である。 これは3.で示す分解酵素の活性を抑える、という意味でも有効な手法である。

3. 分解酵素の存在

宿主の組織を壊すことによって、本来は膜で仕切られている生体分子も一緒に溶け出てくる。その中でも注意すべきなのが、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)である。破砕するときには、目的タンパク質に影響を与えずに、プロテアーゼの活性を抑えるよう配慮する必要がある。

pHや温度の調整、あるいは分解酵素の活性阻害剤を加えるといった方法がある。分解酵素の活性阻害剤は様々な試薬会社から市販されている。

参考URL: 例えば、ロシュ社

https://roche-biochem.jp/catalog/category_33111

4. 表面変性

タンパク質は非常にデリケートなので、タンパク質溶液を泡立てただけでも変性する恐れがある。あまり気にすることが少ないが、タンパク質溶液を入れるチューブ(プラスチック)の壁に接するだけである程度のタンパク質は変性してしまうということが知られている。

影響が顕著な場合は低吸着チューブというのも市販されている。

参考URL:

Protein LoBind Tubes - チューブ, 実験用消耗品 - Eppendorf Japan

5. 長期保存

タンパク質は基本的に長期保存ができない。空気中の酸素による酸化、微生物の混入などによって徐々に変性していく。窒素やアルゴンガスで置換することで、酸化を防ぐ、あるいは-80℃、-196℃(液体窒素)で保存するという対策が取られる事がある。

こうした対策をとっても、実験時にタンパク質構造を100%保っているという保証ができないので、実験計画(微生物の培養からタンパク質精製まで)はよく考えて立てる必要がある。

最後に

これを見てタンパク質精製が非常に難しそうなものに感じてしまったかもしれない。しかし、研究室では長年のノウハウが蓄積されており、精製条件が確立されている事が多い。なので、最初から怖がる必要は無く、まずは研究室の手順でやってみてほしい。

新しいタンパク質の精製を行う場合にも、まずは研究室内でメジャーな精製条件を試してからというのが定石だろう。それではうまく行かず、変更する必要に迫られた場合には、上記が参考になるかもしれない。

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公開日:2017年11月7日