第一周期元素の電子配置:パウリの排他原理

パウリの排他原理 無機化学ノート

前回、電子のエネルギーや角運動量を決める5つの量子数について整理した。
では、実際に電子はどういう順番で埋まっていくかについて考える。
初めに簡単なところからで、第一周期元素である水素とヘリウムを取り上げる。

本記事の要点

水素原子とヘリウム原子
→一番内側の軌道である1s軌道に電子が収容

パウリの排他原理

  1. 2個を超える電子が1個の軌道を占めることはできない。
  2. もし2個の軌道が同じ軌道を占めるときはそれらのスピンは対にならなければならない。

第一周期元素の電子配置

電子は基本的に原子核に近い内側の軌道、つまり主量子数の小さい方から埋まっていく。
その方が原子核と相互作用が強くなって安定だからである。

水素原子の電子配置

周囲の元素と全く反応していない状態(基底状態という)にある水素(H)原子は1s軌道に入る。
主量子数n=1はs軌道しか持たないため、自動的に決まる。

ヘリウム原子の電子配置

1つの軌道には2個の電子が入るため、次のヘリウム(He)原子についても同じ1s軌道に収容される。

Heの核電荷はHの核電荷より大きいため、電子が強く核に引きつけられ、この軌道は小さく引き締められることになる。
→原子半径はHeの方が小さくなる。

水素、ヘリウムの電子配置

図.第一周期元素の原子核と電子の相互作用の強さ

基底状態にある原子の電子がどの軌道を占めているかということを基底状態の電子配置という。
Heでは、2個の電子が1sにあるから、その基底状態の電子配置を(1s)2のように書き表す。

パウリの排他原理

この電子配置を考える上で、避けては通れない法則がある。
それが、パウリの排他原理であり、以下の2つの項目からなる。

  1. 2個を超える電子が1個の軌道を占めることはできない。
  2. もし2個の軌道が同じ軌道を占めるときはそれらのスピンは対にならなければならない。

「対になる」とは?

ここで2つ目の「対になる」について、少し補足しよう。
前回の記事を思い出すと、スピンの方向はスピン磁気量子数msによって決定され、+1/2(↑)か-1/2(↓)を取る。
つまり対とは一方が↑であれば、他方は↓でなければならないという意味である。

もう少し踏み込んだ見方をする。
原子中の電子の状態を表すには、4種の量子数n,l,ml,msが必要であった(sは常に固定値)。
パウリの排他原理の2つ目より、同じ軌道(n,l,mlが同じ)でもmsの値は異なる必要がある。
よって本質的に、2個の電子の量子数が4つとも同じであることはありえないと言える。

最後に:電子2個までは単純に考えられる

今回は1s軌道に入る電子について見てきた。
ここまでは一意的に決まるので、すんなりと飲み込めるものと考える。

しかし、パウリの排他原理の1つ目より、3個目の電子がどこに入るかを考えなければならない。
次はリチウム(Z=3)に来たところで、電子配置がどうなるかを見ていく。

コメント