異核二原子分子の分子軌道(1):フッ化水素を例に

フッ化水素の分子軌道 無機化学ノート

等核二原子分子については既に触れた。

等核二原子分子の分子軌道:第2周期の元素を例に

今回は分子を構成する原子が異なる元素の場合である。
当然、元素が異なれば、持っている原子軌道やエネルギーが異なる。

今回は、異核二原子分子の分子軌道がどの様になるのかを、2記事に分けて見ていく。
2記事目はこちらから。

異核二原子分子の分子軌道(2):一酸化炭素を例に

異核二原子分子の分子軌道の構成

異核二原子分子の分子軌道

等核との違いは、各原子軌道の寄与が等しくならない点である。

→A-Bという異核二原子分子において、波動関数の係数の高い方に分子軌道に関与する電子の見出される確率が高くなる。

結合の安定化と電気陰性度

安定化する結合性軌道に電子が見出されるかどうかは、各原子の電気陰性度と関連する。
電気陰性度が高い方が、電子としてはエネルギーが低いため安定である。

そのため、電気陰性度の高い方には、結合性軌道が見出される可能性が高い。
反対に、電気陰性度が低い原子の近くにある電子は不安定なため、反結合性軌道を形成する。

まとめると

電気陰性度が高いと結合性軌道への寄与が強い
電気陰性度が低いと反結合性軌道への寄与が強い

となる。

異種原子から作られる分子軌道

異核なので、当然二つの原子軌道のエネルギーは異なる。
波動関数のエネルギーが異なると重なり合いが小さくなるため、相互作用が弱くなる。

だが、だからといって異核が等核よりも結合が弱くなるとは限らない。

それは結合の強さというのは以下の点も重要になるためである。

  • 軌道の大きさ
  • どの程度接近できるか

という点も重要となるからである。

Ex) COとN2はともに電子の数が等しいが、結合エンタルピーはCOの方が大きい(1070 vs 946 kJ/mol)

それぞれの分子軌道について復習したい場合はこちら

異核二原子分子の分子軌道(2):一酸化炭素を例に

等核二原子分子の分子軌道:第2周期の元素を例に

フッ化水素の分子軌道

以上を踏まえて、フッ化水素HFの分子軌道について考えてみる。

フッ素Fは電気陰性度の大きい元素である。
よって、HFは極性を持ち、電子はF原子上に局在している。
これを「負の部分電荷がある」と表現する。

まず、HFが使える原子軌道を洗い出してみる。
Hは1s軌道が1個、Fは2s(1個)、2p軌道(3個)の合計5個である。
原子軌道と同数の5個の分子軌道ができる。

これらの分子軌道の中に入れるべき価電子はHが1個、Fが7個の計8個である。
水素とフッ素の電子殻と価電子軌道に関しては、結合軸方面をz軸としてみる。

σ軌道はHの1s軌道、Fの2s軌道、2pz軌道の重ね合わせ
ここから、3つのσ分子軌道が形成される。

Fの2pxと2pyのみでHには同じ対称性の原子軌道はない
そのままで残り(非結合性軌道)、軌道はF原子に局在

異核二原子分子には電子雲の大きさが異なるため反転中心がない。
→等核では用いた偶奇性によるgやuの分類は必要ない。

これを踏まえて、分子軌道は1σ、2σ(F寄り:結合性軌道)、3σ(H寄り:反結合性軌道)、1π(F由来の非結合性軌道)となる。

できた分子軌道に8個の価電子を入れていく。
フッ化水素のエネルギー準位図
HF:(1σ)2(2σ)2(1π)4

となる。
これはすべてF寄りの軌道に電子が入っていることを示している。

冒頭示したように、実際HF分子は極性を持ち、負の部分電荷がF原子上にある。
分子軌道のエネルギー準位図はこの事実に合致している。

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