異核二原子分子の分子軌道(2):一酸化炭素を例に

異核二原子分子-一酸化炭素 無機化学ノート

前回に続いて、異核二原子分子の分子軌道について紹介する。

今回は第2周期の元素同士の分子である。
前回のフッ化水素のように、片方が水素だと、考えるのが比較的単純であった。
しかし、第2周期の元素同士だと、軌道の数が多くなるため、より複雑になる。

異核二原子分子の分子軌道の基本については、前回の記事に記している。

異核二原子分子の分子軌道(1):フッ化水素を例に

一酸化炭素(CO)の分子軌道

COの場合はσ分子軌道、π分子軌道に関与できる2s、2p軌道を両方の原子が持つ。
そのため、HFよりも分子軌道エネルギー準位図が複雑になる。

CO分子の電子配置

CとO原子の電子軌道

軌道の数は、C、O原子ともに2s軌道が1個と2p軌道が3個ずつで合計8個である。
よって、8個の分子軌道ができることになる。
8個の分子軌道の中に、価電子はCが4個、Oが6個で計10個が収容される。

σ軌道を形成する軌道

σ軌道:2s軌道と2pz軌道が関与する。
いくつの分子軌道が関与するかは、各軌道が持つエネルギーに依存する。
そのため、どのσ軌道に元の原子軌道が関与しているかを一概に言うことはできない。

π軌道を形成する軌道

π軌道:HFのときとは違い、COはπ軌道を構成しうる。
2px、2py軌道を両方の原子が持っているためである。
2つのp軌道は同じエネルギーを持っているため、分子軌道は二重に縮退している。

CO分子のエネルギー準位図

以上より、電子軌道は1σ、2σ、3σ、4σ、1π、2π(π軌道は二重に縮退)となる。
こうしてできた分子軌道に、10個の価電子を収容していく。

CO分子のエネルギー準位

基底状態の電子配置は以下のようになる。
CO:(1σ)2(2σ)2(1π)4(3σ)2
HOMO:3σで、この電子はほとんどC原子側にある非結合性の孤立電子対
LUMO:二重に縮退した反結合性π軌道→Cの2p軌道に近い性質を持つ。

電子配置から見るCO分子の性質

CO分子の性質で興味深いのは、CとOの電気陰性度は大きく異なるにもかかわらず、CO分子の電気双極子モーメントは0.1 Dと小さいことである。

さらに、Cの方が電気陰性度は小さいのに、双極子モーメントの負の末端はC原子側にある。
これはCの孤立電子対とCOの結合電子対の分布の複雑性からくる。
具体的にはO側にある結合電子対と、C原子上にある孤立電子対による効果の綱引きである。

このように、電気陰性度だけから極性を判断するのは、反結合性軌道に電子がある場合には特に当てにならない。

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