核酸の塩基にはA, C, G, T, Uがあるが、もし目の前にDNA溶液があったとして
どうやってその配列(並び方)を知ることができるでしょうか?
当然肉眼では見えませんので、色々と工夫をする必要があります。
今でこそ、DNAの配列決定は身近なものとなっています。
受託で配列決定を行っている企業も多く、チューブに試薬を入れて送付するだけ、翌日にはメールで結果のファイルを受け取ることができるようになっています。
しかし、ふと教員からこう言われたことはないでしょうか。
私も世代が異なるので、嘆き節(?)のように言われたことがあるのみでした。
ですが、現在使われている配列決定法にもつながるところがあるようですので調べてみました。
ということで、今回は塩基配列決定法の元となったジデオキシ法について解説します。
概要
ジデオキシ法は主に以下の3ステップからなります。その概略図を更にその下に示します。
- 加熱によって一本鎖DNAを作る
- 分けた一本鎖に4種のヌクレオチドそれぞれで終わる相補的ポリヌクレオチド断片を作らせる
- 断片を分けて検出する
画像を基に、1つずつ見ていきましょう。
一本鎖DNAをつくる
検出はDNAの配列そのものを読むのではなく
その相補鎖を作って、相補鎖の配列を読み取りたいDNA配列に読み替えます。
なぜ、相補鎖に工夫することで読み取るのが、この手法のキモですが、それは後ほど説明します。
とりあえずここでは、相補鎖を読み取る準備として、まずは2本鎖をほどいて1本鎖とします。
相補鎖を合成する
相補鎖を作るためには、以下の材料が必要となります。
- 4つの塩基それぞれのデオキシヌクレオチド(dNTP):DNAの材料
- DNAポリメラーゼ:dNTPをつなげる酵素
- 蛍光標識した開始剤(プライマー): 5’末端の配列に相補的な短いDNA断片
→何もない状態からは相補鎖を作れないため、足がかりとなる断片を用意します。 - 2′, 3’-ジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)→この手法の鍵となる化合物です。本来の2’位に加え、3’位も水素(-H)になっています。
3’位が-OHじゃないと、次のdNTPをつなげないので、伸長反応が止まってしまいます。
つまり、止まったところは加えたddNTPが持つ塩基に相補的な塩基ということになります。
ですので、4つそれぞれのddNTPを含む反応液で反応させると、そのddNTPの相補塩基で止まったいろいろな長さの断片ができることになります。
断片を検出する
「色々な長さ」とくれば、検出には電気泳動が適しています。
各塩基を持つddNTPを加えて行った4つの反応液を並べて電気泳動します。
電気泳動の進む距離は長さに比例しますので、下から順に読んでいけば、鎖の配列を読み取ることができます。
昔のゲルを1つ1つ読んだというのは、この塩基配列の解読で、時間も手間もかかる大変な作業でしょう。
現在の塩基配列決定法
以上の原理をもとに改良されたものが使われています。
プライマーに別々の蛍光色素をつけておき、4つの鎖延長反応を別々に行わせます。
その後、反応液を一緒にして、1レーンでゲル電気泳動します。
ゲルの底から溶出する各断片の蛍光を測定すると、塩基の区別がつくので、配列を読み取ることができます。
すでに、この試料調製と蛍光測定はロボットによって自動化されており、人の手間はだいぶ少なくなりました。
非常に短期間で正確性の高い結果を受け取ることができます。
これによって、「塩基配列を読む」というのは一般的な手法となっていったのでしょう。
最後に
自分は使ったことはありませんのであくまで伝聞ですが、配列決定に用いるシーケンサーという装置はメンテナンスが大変だそうです。
その上冒頭でも触れたように、最近はこのような塩基配列の決定を受託する企業も増えてきました。
よほど頻繁に配列決定を行う研究室以外では、自分で配列決定をするというところは少ないかもしれません。
しかし、気軽に「配列を知るツール」が使えるようになったことで、遺伝子工学の発展に貢献したのは確かでしょう。
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