結合特性:結合次数とルイス酸の関係

結合次数 無機化学ノート

分子軌道理論とルイス構造の記述に見かけ上は大きな差があるように見える。
しかし、ルイス構造の主要点の多くは分子軌道理論でも説明可である。

ルイス構造では、原子同士を線で結ぶことで結合を示していた。
一方、分子軌道理論の場合は

  • 結合性軌道に入った電子対が結合を形成
  • 反結合性軌道に入った電子対は結合を不安定化させる(「反結合」を形成)

としていた。
これだけでは、とても同じ概念を示しているとは判断しにくいだろう。

ここでは「結合次数」の概念を導入する。
そして、ルイス構造と分子軌道理論は根幹は同じであるということを紹介していく。

結合次数

結合次数:以下の考え方で考えた結合の本数

結合→結合性軌道にある共有された電子対が二つの原子間にできるもの:電子数をnと置く
反結合→反結合性軌道にある電子対:電子数を n*と置く

これを数式で定義すると

結合次数-式

Ex. 1) F2:(1σg)2(1σu)2(2σg)2(1πu)4(1πg)4
結合性軌道:1σg、1πu、2σg
反結合性軌道:1σu、1πg
これによってb = 1/2(2+2+4-2-4) = 1

F2はルイス構造によっても、単結合を持つF-Fと同様に記述される。

Ex. 2) N2:(1σg)2(1σu)2(1πu)4(2σg)2
これによってb = 1/2(2+4+2-2) = 3→ルイス構造のN≡Nに一致する。

詳しくは以下で述べるが、結合次数は分子の結合エンタルピーの値と相関する。
等核の二原子分子については、よく対応関係が取れることがわかる。

異核二原子分子の結合次数

等核二原子分子と異なり、異核の場合はそう単純ではなくなる。
正確には、分子を構成する原子の性質を考慮することが必要な場合がある。

たとえば、N2分子と同じ電子数を持つCO分子は結合次数3で、ルイス構造と一致する。
一見、この考え方で問題がないように見える。

もう少し掘り下げるため、別記事にて紹介した、CO分子のエネルギー準位図を見てみよう。

CO分子のエネルギー準位

注意すべきは異核二原子分子は、原子ごとに電子軌道のエネルギーが異なる点である。
その場合、単独の軌道で分子軌道を構成する「非結合性軌道」が生じる場合がある。
CO分子に関しては、以下の図のように考えるのが適切である。

COの結合次数の考え方

図のように、1σ、3σはOおよびC原子上に局在した非結合性軌道とみなすべきである。
非結合性軌道はbの計算からは除外される。

やっかいなのは、非結合性軌道を考慮するかに関わらず、COは結合次数の値を算出できることである。
そのため、何も考えずに単純に計算してしまいがちである。
しかし、意識しなければ他の分子で違う値を算出してしまう可能性がある。
よって、bの値の算出に用いる軌道は、その軌道が結合に寄与しているのかを判断する必要がある。

イオンになった場合の結合次数

ルイス構造はイオンになった場合の結合次数に関する情報は含まれていない。
しかし、上記の分子軌道に基づく定義であれば、イオンの場合でも結合次数を算出することが可能である。
このとき、結合次数は整数になるとは限らない。

例えば、N2分子が電子が1つ抜けてN2+イオンになった場合、結合次数は3から2.5に減少する。
結合次数が減少することで、結合エンタルピーは減少し、結合長は長くなる。

結合特性の相関関係

上記でもいくつか例は出していたが、結合の強さと結合長とは相関関係がある。

ある与えられた元素対の原子間の結合に対して

  • 結合エンタルピーは、結合次数が大きいほど大きくなる。
  • 結合長は、結合次数が大きいほど短くなる。

といえる。

炭素-炭素結合でも、この相関関係は当てはまることを以下の表で示す。
結合エンタルピーの値は、対象の結合を持つ分子に対して平均を取っている。

結合の種類 結合エンタルピー(kJ/mol) 結合長(pm)
C-C単結合 368 154
C-C二重結合 720 134
C-C三重結合 962 120

参考:アトキンス物理化学(上)第8版 東京化学同人

その依存性の程度は元素によって違うが、傾向としては同様に成り立つ。

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