三本らせん構造を取るタンパク質:コラーゲン

以前取り上げたケラチンに並んで、馴染み深いタンパク質としてコラーゲンが挙げられる。
典型的コイルドコイルタンパク質:ケラチン

コラーゲンはすべての多細胞生物に存在するタンパク質である。
脊椎動物においては最も多く存在する。

外からの応力に抵抗するため強く、不溶な繊維構造を持つ。
骨、歯、軟骨、腱、皮膚や血管の繊維などの結合組織における主成分である。

今回はこのコラーゲンの特徴的な構造について見ていく。

要点
  • ”Gly-Pro-Hyp”の繰り返し配列が特徴的。(Pro:プロリン、Hyp:ヒドロキシプロリン)
  • HypはProからプロリルヒドロキシラーゼによって合成。
  • コラーゲンのポリペプチド鎖間で左巻きヘリックス構造を作る。
  • 特徴的な引張強度は、よく詰まった堅い3本ねじれ構造による。
  • 人工素材として応用研究も進められている。

コラーゲンのアミノ酸構成

コラーゲン分子は3本のポリペプチド鎖からなっており、これがタンパク質の強さの源になっている。
アミノ酸組成も非常に特徴的で、1/3がGly、15~30%がPro、4-ヒドロキシプロリン(Hyp)である。

典型的なコラーゲンのポリペプチド鎖は約1000残基にわたって
”Gly-X-Y”
という3アミノ酸の単調な繰り返しからなる。
ここでX=Pro、Y=Hypとなる場合が多い。

Hypは20種のアミノ酸の中になく、Proとして合成された後に翻訳後修飾によって作られる。
この修飾はプロリルヒドロキシラーゼが担い、活性にはビタミンC(アスコルビン酸)が必要となる。

壊血病は食物中のビタミンCの不足が原因で発症する。
これはプロリルヒドロキシラーゼの活性が低下することで、Hypが作られにくくなることが原因。

コラーゲンの構造

ポリペプチド鎖同士の会合

Proには20種類のアミノ酸の中で唯一ヘリックス内の水素結合形成に必要なアミドがない。
そのため、αヘリックスを作ることができない。

その代わりにコラーゲンのポリペプチド鎖間で、1回転3残基の左巻きヘリックス構造を取る。
3本の左巻きポリペプチド鎖が並んで互いに絡まり、緩やかにロープのように右巻きにねじれて
コラーゲン分子の三本らせん構造ができる。

三本らせん構造内の相互作用

各ポリペプチドの3つ目の残基が三本らせんの真ん中に来る。
真ん中は混み合っているので、小さなGly残基しか入らない。
各鎖は互いにずれて並び、三本らせん軸の同じ高さに3本の鎖のGly,X,Yが揃う。

そして各GlyのN-Hが隣の鎖のXのカルボニル酸素に強く水素結合できるように向く。
かさ高く、柔軟性を欠くProとHypは会合体全体の硬さを生み出すことになる。

コラーゲンの硬さに対する構造的寄与

コラーゲンの特徴的な引張強度は、よく詰まった堅い3本ねじれ構造による。
ヘリックスのねじれと構成するポリペプチドのねじれが逆向きなので、張力をかけても容易には引き伸ばせない。
繊維を束ねる高品質のロープやワイヤ、あるいはケラチンなど、他のタンパク質でもこの逆向きのねじれの組み合わせが使われる。

様々なタイプのコラーゲンが集まり、組織に応じてゆるいネットワークや太い繊維を形成し、束ねられたりシート状に広げられたりする。
繊維をつくるコラーゲン分子では、三本らせんの構造単位が密に詰まって生じる疎水相互作用によって、ずれつつ並んだ構造が安定化される。

コラーゲンのポリペプチド鎖間の結合

コラーゲンは共有結合で架橋されており、不溶性である。
またCysがほとんどなく、架橋はケラチンのようなジスルフィド結合ではない。
その代わりにLysとHisの間に架橋ができる。
Lys残基をアルデヒドのアリシンに変える酵素リシルオキシダーゼがこの架橋反応に関わる。
架橋はコラーゲン分子のN端とC端付近と決まった位置に架かる。

(図:アリシンの分子構造)

架橋の割合というのは年齢とともに上昇する。
年をとった動物の肉が若い動物よりも硬いのは、この架橋反応が進んでしまうためである。

コラーゲンの人工素材としての応用

コラーゲンの性質を活かして、人工素材として応用研究も進められています。
人工的にCysを導入することで、コラーゲンのように自由に強度を変えられる人工素材を開発が進められています。
早大が人工コラーゲン開発 将来は角膜などにも

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